緊急事態宣言発出後に、やむを得ず臨時休業中のUnique/Physiqueです。
皆様には大変ご迷惑をおかけしております。
自粛モードだからといって、ただ悲嘆に暮れて手を拱いているのも如何なものかと思い。
JAFT(日本フットウェア技術協会)https://jaft-foot.org/ の有資格者ウェブセミナーの中から、藤原岳久先生(JAFT理事 藤原商会 https://www.f-shokai.com/ )のセミナーを拝聴しました。
「ランニングシューズのイノベーション」
目まぐるしいランニングシューズのテクニカルイノベーションがどういう内容なのか。
そして、どういう影響を世の中に及ぼしたのか。
ランニングシューズのもつ可能性と、選手と提供者がどのようにかかわっていけばいいのか。
講義を受けて、私なりにまとめてみる。
2018年。東京オリンピックを前にして、一つの企業の戦略に陸上業界全体が揺さぶられたのを目の当たりにした。
NIKE ズームXヴェイパーフライ4%の出現だ。
おそらく、スポーツブランドの一つの製品が基準となってルールが出来上がるというのは、私の記憶にはない。
競泳において、SPEEDO社のレーザーレーサー騒動が記憶に新しいところだ。
北京オリンピックでの水泳世界記録爆誕の要因もレーザーレーサーだったと言われ、この後使用禁止に。
一人では着られない・値段が高い(1着約7万円)・素材(ウレタン)による浮力の増加が禁止の要因になった経緯がある。
これがあったからなのか、今回のNIKEは「突き抜けてしまえ!」という勢いを感じた。
国際陸連が認めようが認めまいが、最高の技術を持つ選手に最高の技術を融合させたら最高の記録が出せると。
誰がなんと言おうと、前人未到の記録を出すためのテクニカルイノベーションを進めていくのだという執念とも言えるだろう。
その証拠に、巷で「カーボンプレートの使用はテクニカルドーピングだ」という論争が起こってもどこ吹く風でイベントを続け、第2弾・第3弾「INEOS 1:59」までも見事に成功させた。それもアスリートを巻き込んで。
それをやり通したことで製品の普及が尋常ではないスピードで進み、他社も黙っているわけにもいかなくなり。追随するようにカーボンプレートを挿入したシューズを続々開発を進め始めた。
結果として、世界陸連の出したレギュレーションは、ヴェイパーフライ・アルファフライをギリギリ認めるものになった。
・プロトタイプのレースでの使用禁止
・カスタムについては医療的な問題などの理由がない限りはプロトタイプと見做す
・スタックハイト40mm以内、プレートは1枚のみ挿入可能
・店頭・通販で購入でき、発売から4ヶ月経過しているもの
・シューズが全ての人に公開されていること
改定を改めて見て、なるほどと思う。思うが。
微妙に納得いかないのはなんなのか。
素人の私が側から見ていても、カーボンプレートはテクニカルドーピングとしか思えなかった。
能力を引き出すというよりも、増幅させているようにしか見えなかった。
レーザーレーサーのウレタンと何が違うのか、カーボンプレート。
値段と普及スピードと大人の事情。
違いはそこかなぁ。
ともあれ。
ここ3年で、目覚ましいテクニカルイノベーションが進み、世界を変えたヴェイパーフライ4%の功績は今後のランニング様式を変えるきっかけになり、そしてシューズを通して人間の可能性をも変えました。
靴とは。ランニングとは。いったいなんなのか。
これまではあくまで動きをサポートするものでした。
しかし、このイノベーションにより認識を変えるきっかけになりました。
選手の特徴に合わせてシューズを選ぶ時代から、選手が目的に合わせてシューズを使いこなす時代に変わったのです。
なぜなら、市販品でも最高性能のシューズが手に入るようになったから。
そして今後は、技術の進んだものが安価で作られていく。
そして、藤原先生の見ているシューズの今後の課題は
・マテリアルをエコにしていくこと
・開発自体もサスティナブルであること
・テクニカルな部分は、動作を補助する程度の鬩ぎ合い(どこまで動きを補助するのか)になること
最高品質のものを使うのは「人(ランナー)」であること。
故に、主体は人であり、靴はあくまで人の持つ力を引き出すツールでしかない。
靴を「どう使うのか」「どの用途で使うのか」「誰が使うのか」によって選ぶ余地ができた以上、それを使いこなすことが重要になってくる。
というわけで。
シューズを選ぶときは、シューフィッターのいる店でよく「話を聞いてもらいながら選ぶ」ようにしましょう。